台湾人が喋っているのは「台湾語」?「中国語」?
よく日本人の方に聞かれます。
台湾に詳しい方や、台湾に住んだことのある方でない限り、この問いにはっきり答えるのは難しいと思います。台湾なのだから「台湾語」では?というわけでは決してありません。また台湾に住み始めたばかりの人は「台湾は実はほとんど中国語だ」と思われるかもしれませんが、実際はそうとも言い切れないのが現状です。
この問いに対して正確に答えようとすると話がとても長くなってしまうほどの長い歴史が関係する深いテーマなのです。ただ今回はそういった過去の歴史は触れずに、今の台湾における「中国語」と「台湾語」の現状のみを簡単に書いてみようと思います。
そもそも「台湾語」とは?
「台湾語」とはズバリ中国語の方言の一つです。しかもかなり発音に違いがあるため、中国人ですら台湾語を聞き取ることができないレベルです。(一部は理解できるようですが)
また、実は中国大陸にも「台湾語」に極めて近い方言があります。それは「閩南語(ミンナン語)」と呼ばれている福建省南部の言葉です。現在の大部分の台湾人の祖先は福建省からの移民なので、台湾語のルーツも福建省の「閩南語」だと言えます。
実際に福建省の方々は台湾語で使われている言葉を「台湾語」とは言わずに「閩南語」だと表現します。逆に台湾人の口からは「閩南語」という言葉はほとんど聞かれません。
実際、台湾ではどれくらい「台湾語」が使われているか?
僕は2013年から2016年まで、貿易会社の駐在員として台湾各地の現地の方々と交流する機会がありましたので、その体験をもとに解説させていただきます。
まず台湾語が多く使われるのは、台湾の中南部(特に都市から離れた小さな街や村)で、40〜50歳以上の中高年層がよく台湾語を喋っているような印象を受けました。ただその方々は中国語も普通に喋れますし、状況に応じて器用に使い分けているようです。
さらにご年配の方になると、中国語があまり得意でない、あるいはほとんど喋れないという方も少なくないようでした。
つまり、田舎に行けば行くほど、また年齢層が高くなればなるほど、台湾語の比率が上がっていくような印象です。
逆に台北の若者は「台湾語」が喋れない!
僕は仕事上、中南部の40歳以上の台湾人とお話する機会がたくさんありましたので、台湾語に触れることも自然と多かったのですが、台湾の首都である台北に行けばその様子は一変します。
台北で日台交流会などで出会う若者と話をしていて驚くのですが、今の若い台湾人(学生〜20歳代)の多くが台湾語が苦手なようで「聞くことはできるが、うまく喋れない」と言います。
「台湾人が台湾語を喋れない」とは奇妙な話ですよね。
台北は中南部とは違い、明らかに「中国語」が主流になっています。特に年齢が若いほどむしろ中国語しか喋れなくなっているというのが現状です。台湾政府もその状況を危惧して学校で台湾語の授業を必修にしたというほどです。
公共の場所では「中国語」
台湾のテレビをつけるとほとんどの番組で「中国語」が使われています。ニュース番組、バラエティ、グルメ、ドラマ、ほぼ全てが中国語です。もちろん台湾語の番組もありますが、全体の割合から見ると多くありません。
また、台湾で行われるイベントなどの司会進行もほぼ中国語です。街頭演説も中国語です。電車やバスに乗ってもアナウンスはまず最初に中国語が流れます。お店に行っても店員は中国語を喋ります。
よって、皆さんが台湾旅行に行った時に、周りから聞こえるのはほとんどが中国語だと考えて良いと思います。(ただし、ローカルの市場やオジちゃんオバちゃん同士の会話は台湾語がメインですが…)
結論、現在の流れとして「中国語」が主流
上にも書いたように、現在、台湾の中南部、そして中高年層以上の台湾人を中心として、台湾語が広く使われているのも事実ですが、現在の流れを考えた上で、今台湾で主流なのはやはり「中国語」だと思います。ほとんどの若者は中国語を喋りますし、むしろ若者同士が台湾語で会話しているのを僕は4年間で聞いたことがありません。
僕はむしろ台湾語は数十年後には消滅してしまっているのではないかと考えています。これについては以前にも記事を書きました。

よって、台湾では「中国語」が喋れたら日常生活に困ることはありませんし、台湾で「中国語」を勉強するのも環境として全く問題ないと考えています。
ですが、そんな状況で「台湾語」が使えたら、それはそれで現地の方々に喜ばれるので、台湾に興味のある人や台湾が好きな人は「台湾語」を勉強することもオススメです。

以上、元台湾駐在員である僕が自分なりに台湾で喋られている言葉についてまとめてみました。何かの参考になれば幸いです!